めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

「技術者のための基礎解析学」が発売されます!

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『ITエンジニアのための機械学習理論入門』(技術評論社)、そして、『TensorFlowで学ぶディープラーニング入門』(マイナビ出版)を出版させていただいた後、「機械学習に必要な数学をもう一度しっかりと勉強したい!」ーー そのような声を耳にすることが次第に増えてきました。とりわけ、私の書籍の熱心な読者の方から「この本にある数式を理解したくて、あらためて数学の勉強を始めました!」という声を聞き、何かその手助けができないか・・・と真剣に考えていた折、翔泳社の片岡仁氏から「数学の本でも書きませんか?」とのお声がけをいただき、本書の構想が始まりました。決して初心者向けとは言い難い、本格的な数学書の企画に賛同いただき、書籍化に向けた支援をいただいたことにあらためて感謝したいと思います。また、本書の原稿を隅々まで確認していただいた、査読者の方々にもこの場を借りてお礼を申し上げます。

具体的な内容については、翔泳社のWebサイトに目次が掲載されていますので、ぜひ、そちらを参照してください。機械学習だけに特化したわけでない、ある意味、とても「標準的」な解析学の入門書ですが、ここにこそ「機械学習に必要な数学」の本質があるはず、ということが私自身の結論です。本書に込められた筆者の想いは、本書の「はじめに」に記載されていますので、参考としてここに引用させていただきたいと思います。

本書の内容は、広大な数学の世界のまだまだわずかな一端に過ぎません。今後、機械学習/深層学習をはじめとするデータ分析の理論が発展していく中で、より高度な数学の理論がさらに重要な役割を果たしていくことでしょう。この機会に、「今こそ本格的な数学の世界に挑戦しよう!」、そんな決断をしていただける読者の方が現れることを心待ちにしています。もちろん、私自身もまだまだ勉強していきます。(`・ω・´)キリッ

はじめに

昨今の機械学習ブームの中、IT業界を中心とするエンジニアの方々から、「機械学習に必要な数学をもう一度しっかりと勉強したい」、そんな声を耳にすることが増えました。本書は、そのような読者を念頭におき、理工系の大学1、2年生が学ぶレベルの解析学(微積分)を基礎から解説した書籍です。大学生向けの教科書であれば、すでに多数の書籍がありますが、本書の特徴は、「定義と定理をもとに、厳密に展開される議論をとにかく丁寧に説明する」という点にあります。数式の変形についても、途中の計算をできるだけ省略せずに記載して、議論の展開を見失うことがないようにと配慮しました。大学生のころに勉強した、あの「厳密な数学」の世界をもう一度、がっつりと堪能していただけることでしょう。

「機械学習に必要な数学」というと、数学をただの道具と割り切って、公式の使い方、あるいは、数式が表わす意味だけを直感的に理解できれば十分と考える方もいるかもしれません。たしかに、道具として機械学習を使うだけであれば、数学の深い知識は必要ないかもしれません。しかしながら、機械学習のために数学が必要と考える方の多くは、数式を含んだ高度な書籍や論文を読みこなしてみたいという方ではないでしょうか。そのためには、やはり、定理や公式の内容、あるいは、数式の変形を根本から理解する必要があります。そして、そのための最短経路は「証明の内容を理解する」ことにあります。――ある定理・公式がなぜ成り立つのか、どのようにしてそれが証明されるのか、そこをおさえることで数式の背後に隠れた本質が理解できます。その結果として、どのような場面でそれが役に立つのか、なぜここでこの数式が必要なのか、そういった点が自然に理解できるようになるのです。

機械学習に関連する数学には、大きく、解析学、線形代数学、確率・統計学の3つの分野があります。本書は、これらの中で最も基礎となる、解析学、とくに、微積分の理論を中心に解説しています。残念ながら、本書一冊で機械学習に必要な数学がすべて学べるというわけではありませんが、もう一度、本格的な数学の世界に触れ、自信を持って「機械学習の本質が理解できた」と言えるための第一歩は、必ずここにあるはずです。受験勉強から解放されて、あこがれの大学数学の教科書を開いたあの時の興奮をわずかなりとも思い出していただければ、筆者にとってこの上ない喜びです。