何の話かというと
Twitterで「昇圧器で電圧を4倍にしたら、4倍の電流が流れるのはおかしい(エネルギー保存則がほげほげ)」という強烈にスルー力が試される話題を見かけたのですが、スルー力を発揮しきれずに思わず計算してしまいました。。。。
詳しい解説はしないので、電気工学が得意な方は、「そうだよねー」と思って読んでください。
・参考資料
計算
定電圧電源 に、自己インダクタンス 、相互インダクタンス のトランスを介して、インピーダンス の負荷を接続
------ -------- V L1|| M ||L2 Z2 ------ --------
この時、電源側からトランス込みで負荷側を見た時の入力インピーダンスは、
負荷側に抵抗 を接続して、 倍に昇圧する理想的なトランスを仮定すると、
以上より、
()
つまり、トランスを入れずに直接に抵抗 を電源に接続した場合に比べて、電源側から見た抵抗値は に減少して、電源側には 倍の電流が流れる。従って、電源の消費電力は 倍に増加する。
一方、負荷側から見ると、(当然ながら)トランスを入れずに直接に抵抗 を電源に接続した場合に比べて、 倍の電圧がかかって、 倍の電流が流れる。
力学モデルによる説明
インピーダンス計算の説明をするつもりはないのですが・・・、もうちょっと直感的な喩え話ができなかと思って、こんな力学モデルを考えてみました。
ざらざらした机の上に箱をおいて引っ張ると、速度 に比例した摩擦力 がかかるものとします。下図のように滑車をかまして、質量 のおもりをぶら下げると、箱の速度 はいくらになるでしょうか?
重力 と摩擦力 が釣り合う(一致する)ところで速度は一定になるので、
となります。当然ながらおもりが落ちる速度もこれと同じ です。
それでは、一方、下図のように直径の異なる滑車を組み合わせてぶらさげるとどうでしょうか?
箱をつなぐ方の滑車を 1/2 の大きさにしたとすると、てこの原理により、箱には、2倍の力 がかかります。したがって、箱の速度 は、先ほどの2倍になります。
しかも、おもりの方で考えると、滑車の直径が異なることから、おもりは箱の2倍の速度で動くので、おもりがおちる速度は、
と、先ほどの4倍になります。
では、それぞれの場合で、単位時間(1秒間)に、おもりが行う「仕事」の量は、どのように変化するでしょうか?
おもりがする仕事は、「力×距離」で計算できるので、おもりの速度が4倍になることから、おもりがする仕事は4倍になります。おもりが引っ張る力は変わりませんが、滑車を使ったおかげで、楽にひっぱることができて、おもりはがんばって、4倍の仕事をすることになるわけです。
これは、滑車の部分が昇圧器に相当すると考えることができます。電源の電圧 は同じでも、昇圧器を入れることによって、電源から見た時の電気抵抗が減少して、より多くの電流が流れて、より多くの電力を消費することになります。
また、引っ張られる箱の方からみると、2倍の力で引っ張られて、2倍の速度になりますが、これは、昇圧器の先にある抵抗に2倍の電圧がかかって、2倍の電流が流れるのと同じことですね。