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めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

ガロア理論のメモ(その7):代数方程式の可解条件

代数的可解性の定義

定理5.1により、任意の多項式 f(X) に対して、形式的に分解体を定義することができるが、あくまで、最小多項式 p(X) による剰余体 F[X]/p(X) を構成しているだけであり、たとえば、有理数係数の現実の多項式について、複素数体上での解を求める操作に直接対応するものではない。ここでは特に、出発点となる体 F に対して、べき根で表現される元を追加していくことで、分解体が構成できるかどうかを問題にする。そこで、次の定義を行う。

定義7.1
――――――――――
多項式 f(X)\in F[X]F 上の分解体を E とする時、拡大体の列

 F_m \supset \cdots \supset F_1 \supset F_0 = F

が存在して、F_m \supset E であり、それぞれの拡大がべき根拡大である、つまり、定理6.1により、

 F_k = F_{k-1}(\alpha,\omega_n)
\alpha は、適当な na\in F_{k-1} に対する X^n-a \in F_{k-1}[X] の根で、\omega_n は、1 の原始 n 乗根。ただし、n=2 の場合は、\omega_n=1 なので、\omega_n を付与する必要はない。)

が成り立つとする。この時、「多項式 f(X)F 上で代数的に可解である」という。
――――――――――

これは、与えられた多項式の解が、体としての四則演算とべき根の組み合わせで表現できることを意味している。そして、ここでは、代数的可解性は、ガロア群が可解群であることと同値になることを示していく。

ガロアの定理の証明

はじめに次の補題を示す。

補題7.1
――――――――――
\omega を1の原始 n 乗根とする時、有限次元のガロア拡大 E/F(\omega) に対して、{\rm Aut}(E/F(\omega)) が巡回群で、|{\rm Aut}(E/F(\omega))|=n であったとする。この時、E/F(\omega) はべき根拡大である。

(証明)
{\rm Aut}(E/F(\omega)) の生成元を \sigma とする時、\sigma をベクトル空間 [E:F(\omega)] の線形写像とみなして固有方程式 \sigma(\alpha)=\lambda\alpha を考える。この時、\sigma^n=1 より、\alpha=\lambda^n \alpha が成立して、固有値 \lambda は、\{1,\omega,\cdots,\omega^{n-1}\} となる。特に \sigma(\alpha)=\omega\alpha となる固有ベクトル \alpha\in E を考えると、\sigma(\alpha^n)=\left\{\sigma(\alpha)\right\}^n = \omega^n \alpha^n=\alpha^n より、\alpha^n \in F(\omega) となる。したがって、\{\alpha,\alpha\omega,\cdots,\alpha\omega^{n-1}\}\subset E は、X^n - \alpha^n \in F(\omega)[X]n 個の相違なる根である。

また、{\rm Aut}(E/F(\omega)) \supseteq {\rm Aut}(E/F(\alpha,\omega)) に注意すると、{\rm Aut}(E/F(\alpha,\omega)) の元は、\sigma^ii=0,\cdots,n-1)のいずれかであるが、\sigma^i(\alpha) = \omega^i \alpha \ne \alphai \ne 0)より、\alpha を固定するのは恒等写像のみになる。つまり、{\rm Aut}(E/F(\alpha,\omega)) = \{1\}。したがって、E=F(\alpha,\omega) であり、EX^n - \alpha^n \in F(\omega)[X] の分解体となる。
――――――――――

補題7.2
――――――――――
有限次元の拡大 E/F のガロア群 G={\rm Aut}(E/F) がアーベル群の時、中間拡大の列

 E = A_0 \supset A_1 \supset \cdots \supset A_l = F

とそれに対応するガロア群の部分群の列

 \{1\} = {\rm Aut}(E/A_0) \subset {\rm Aut}(E/A_1) \subset \cdots \subset {\rm Aut}(E/A_l) = {\rm Aut}(E/F)

が存在して、隣り合う群の商群はすべて巡回群となる。

(証明)
|G|=[E:F] < \infty より、G は有限アーベル群であり、アーベル群の基本定理より、G は有限個の巡回群の直積に分解される。

 G \cong C_1 \times \cdots \times C_l

ここで、A_0=EA_k = E^{C_1\times\cdots\times C_k\times\{1\}\times\cdots\times\{1\}}k=1,\cdots,l)として中間体の列

 E =A_0 \supset A_1 \supset A_2 \supset\cdots\supset A_l = F ――― (1)

を構成すると、定理3.4より、これに対応する部分群の列が得られる。

 \{1\} = {\rm Aut}(E/A_0) \subset {\rm Aut}(E/A_1) \subset\cdots\subset {\rm Aut}(E/A_l)={\rm Aut}(E/F) ――― (2)

また、A_k の定義より、{\rm Aut}(E/A_k) \cong C_1\times\cdots\times C_k であるので、

 {\rm Aut}(E/A_{k+1}) / {\rm Aut}(E/A_k) \cong C_{k+1}

となる。したがって、(2)が求める部分群の列となる。
――――――――――

いよいよ、本題の定理を証明する。

定理7.1
――――――――――
多項式 f(X)\in F[X]F 上の分解体を E とする時、ガロア群 {\rm Aut}(E/F) を「多項式 f(X)F 上のガロア群」と呼ぶ。この時、f(X) が代数的に可解であることは、{\rm Aut}(E/F) が可解群であることと同値である。

(証明)
(代数的に可解 ⇒ 可解群)
f(X) は代数的に可解とする。この時、f(X) の分解体 E に対して、べき根拡大の列

 F_m (\supset E) \supset F_{m-1} \supset \cdots \supset F_1 \supset F_0 = F

が存在する。この時、任意の r1\le r \le m)について、F_r は次の条件を満たすことを数学的帰納法で証明する。

 {\rm Aut}(F_r/F) は可解群

 F_r/F はガロア拡大

これが証明できたとすると、E がガロア拡大 F_m/F の中間拡大 F_m\supset E\supset F で、かつ、(E は分解体なので、定理5.2より)E/F がガロア拡大であることから、定理4.2より、{\rm Aut}(F_m/F)/{\rm Aut}(F_m/E) \cong {\rm Aut}(E/F) となる。したがって、{\rm Aut}(F_m/F) が可解群であることから、定理4.3により、{\rm Aut}(E/F) が可解群であることが証明される。

まず、r=1 の時は、自明に成立する。(F_1 \supset F はべき根拡大なので、定理6.1より {\rm Aut}(F_1/F) は可解群になる。また、定理5.2より、F_1/F はガロア拡大になる。)

次に、r-1 まで成立すると仮定する。

いま、F_r/F_{r-1}X^n-a によるべき根拡大なので、定理6.1より、F_r=F_{r-1}(\alpha, \omega) となる \alpha, \omega が存在する。ここに、\alpha^n=a、および、\omega は1の原始 n 乗根である。また、F_{r-1}/F がガロア拡大であるので、定理5.2より、F_{r-1} はある多項式 g(X) の分解体であり、F_r=F_{r-1}(\alpha,\omega)g(X)(X^n-a) の分解体である。したがって、再度、定理5.2より、F_r/F がガロア拡大となる。

したがって、拡大の列 F_r \supset F_{r-1} \supset F において、F_r/FF_{r-1}/F が共にガロア拡大であり、定理4.2より、次が成立する。

 {\rm Aut}(F_r/F)/{\rm Aut}(F_r/F_{r-1}) \cong {\rm Aut}(F_{r-1}/F)

ここで、定理6.1より、{\rm Aut}(F_r/F_{r-1}) は可解群で、さらに {\rm Aut}(F_{r-1}/F) も可解群であることから、定理4.4により、{\rm Aut}(F_r/F) は可解群となる。これで F_r は証明するべき性質をすべて持っていることがわかった。

(可解群 ⇒ 代数的に可解)
{\rm Aut}(E/F) が可解群であることから、{\rm Aut}(E/F) の部分群の列が存在するが、定理3.4より、これは、E \supset F の中間体の列に対応する。具体的には、中間体の列を

 E=F_m \supset F_{m-1} \supset\cdots\supset F_0 = F ――― (1)

として、これに対応する自己同型写像の部分群の列

 \{1\} = {\rm Aut}(E/F_m) \subset {\rm Aut}(E/F_{m-1}) \subset\cdots\subset {\rm Aut}(E/F_{0})={\rm Aut}(E/F) ――― (2)

が可解群の列を構成する。つまり、隣り合う群は、正規部分群であり、商群はアーベル群になる。(任意の k について、E/F_k は中間拡大なのでガロア拡大になることにも注意。)

この時、任意の隣り合う拡大体 E\supset F_{k-1}\supset F_k において、E/F_k はガロア拡大で、さらに、{\rm Aut}(E/F_{k-1}){\rm Aut}(E/F_{k}) の正規部分群であることから、定理4.1により、F_k/F_{k-1} はガロア拡大となる。よって、定理4.2により、次の同型が成立する。

 {\rm Aut}(E/F_k) / {\rm Aut}(E/F_{k-1}) \cong {\rm Aut}(F_k/F_{k-1}) ――― (3)

左辺は(2)の隣り合う群の商群なのでアーベル群であり、{\rm Aut}(F_k/F_{k-1}) はアーベル群となる。したがって、補題7.2を用いて、拡大 F_k/F_{k_1} をさらに中間体に分割することで、(1)(2)は、隣り合う群の商群がすべて巡回群となる列に分割することができる。これ以降は、(1)(2)をそのように分割したものとみなして議論を進める。つまり、(3)において、{\rm Aut}(F_k/F_{k-1}) は巡回群であるとする。

この時、(1)の拡大列をべき根拡大の列に帰納的に拡張していく。

まず、ガロア拡大 F_1/F_0 において、|{\rm Aut}(F_1/F_0)| = n_1 として、1の原始 n_1 乗根 \omega_1 を付与した拡大 F_1(\omega_1)/F_0(\omega_1) を構成する。この時、{\rm Aut}\left(F_1(\omega_1)/F_0(\omega_1)\right)\cong {\rm Aut}(F_1/F_0) であることから、補題7.1により、F_1(\omega_1)/F_0(\omega_1) はべき根拡大となる。

さらに、F_2/F_1 において、|{\rm Aut}(F_1/F_0)| = n_2 として、1の原始 n_2 乗根 \omega_2 を付与した拡大 F_2(\omega_1,\omega_2)/F_1(\omega_1,\omega_2) を構成する。さきほどと同様に、{\rm Aut}\left(F_2(\omega_1,\omega_2)/F_0(\omega_1,\omega_2)\right)\cong {\rm Aut}(F_2/F_1) であることから、補題7.1により、F_2(\omega_1,\omega_2)/F_1(\omega_1,\omega_2) はべき根拡大となる。

この段階で、次の拡大列を考えると、これはべき根拡大の列になることがわかる。

 F_2(\omega_1,\omega_2) \supset F_1(\omega_1,\omega_2) \supset F_1(\omega_1) \supset F_0(\omega_1) \supset F_0

この手続きを繰り返すことで、最終的に E(\omega_1,\cdots,\omega_m) にいたる、べき根拡大の列が構成できて、E(\omega_1,\cdots,\omega_m) \supset E であることから、f(X) は代数的に可解であることが示された。
――――――――――