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めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

ガロア理論のメモ(その6):べき根拡大と可解群

根の1つを付与した拡大

定理5.1より、任意の n 次の既約多項式 p(X)\in F[X] は、F 上の分解体 E において、

 p(X) = a \prod_{i=1}^n (X-\alpha_n)

と分解される。また、補題5.2より重根は存在しない。

この時、すべての根 {\mathbb X}=\{\alpha_1,\cdots\alpha_n\} の中から1つ \alpha=\alpha_1 を取り出して、これだけを付与した拡大体 F(\alpha) を考える。この時、定理5.2(1)より、F(\alpha)/F がガロア拡大であることは次と同値になる。

{\mathbb X} の元はすべて F(\alpha) に含まれる。

また、{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right) \subseteq {\rm Hom}_F\left(F(\alpha),E\right) に注意すると、

 |{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right)| \le |{\rm Hom}_F\left(F(\alpha),E\right)| \le n(∵ 補題5.1)

  =[F(\alpha):F](∵ 定理1.2)

となるが、F(\alpha)/F がガロア拡大の場合は、定理2.3より、|{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right)|=[F(\alpha):F] となるので、上記より、|{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right)|=n が得られる。つまり、{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right) の元は n 個に限定される。そして、次の写像は、すべて {\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right) の相違なる元を定義することが確認できるので、これらが {\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right) を与えることになる。

 \sigma_i : \alpha \mapsto \alpha_ii=1,\cdots,n

また、これらを \alpha 以外の根に作用させた場合を考えると、p(\sigma_i(\alpha_j))=\sigma(p(\alpha_j))=0 より、これは根から根への置換を与えることがわかる。

つまり、F(\alpha)/F がガロア拡大の場合、{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right) は、すべての根に対する置換群の部分群を形成する。これを補題として記載しておく。

補題6.1
――――――――――
既約多項式 p(X)\in F[X] は、F 上の分解体 E において、根 \{\alpha_1,\cdots,\alpha_n\} を持つとする。この時、\alpha=\alpha_1 として、F(\alpha)/F がガロア拡大の場合、{\rm Aut}\left(F(\alpha)/F\right) は、 \{\alpha_1,\cdots,\alpha_n\} に対する置換群の部分群を形成する。
――――――――――

べき根拡大と可解群の関係

ここで、多項式 X^n-1 \in F[X] の分解体を考えてみる。これは既約ではないので、補題6.1は適用できないが、原始 n 乗根 \omega を用いると次の同型が成り立つ。

 {\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right) \cong G

ここに、G は、n と互いに素な 1\le t\lt n を集めた集合に対して、{\mathbf Z}/n{\mathbf Z} 上での積を入れて群にしたものである。(これが群になることは、「2014 年度 代数学特論」の講義ノート第3章「3.2.2 乗法を演算とする群」などを参照。)

補題6.2
――――――――――
多項式 f(X) = X^n-1 \in F[X] の分解体を E とする時、E=F(\omega) となる \omega\in E が存在して、{\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right) はアーベル群 G の部分群に同型となる。

ここに、G は、n と互いに素な 1\le t\lt n を集めた集合に対して、{\mathbf Z}/n{\mathbf Z} 上での積を入れて群にしたものである。

また、\omega は、1の原始 n 乗根になっており、\omega^n=1、および、i \ne j \Rightarrow \omega^i \ne \omega^j を満たす。

(証明)
補題5.2より、f(X) は重根を持たないことに注意して、n 個の相違なる根の集合を {\mathbb X} = \{\zeta \in E\mid \zeta^n=1\} \subseteq E とすると、これは、E の積に関して群となる。体に含まれる有限部分群は、巡回群となることが知られており、{\mathbb X} = \{1, \omega, \cdots, \omega^{n-1}\} となる \omega \in E が存在する。この時、{\mathbb X} の元はすべて \omega から生成されるので、F(\omega)f(X) の分解体であり、E=F(\omega) となる。

なお、任意の t \in G について、{\mathbb X} = \{ \omega^{mt} \mid m=0,\cdots,(n-1)\} となることから、より一般には、E=F(\omega^t)t\in G)となる(*1)。

ここで、\omegaF 上の最小多項式を p(X) = {\rm Irr}(\omega, F) とすると、p(X) の根は {\mathbb X} に含まれるが、\omega^tt \in G)以外は、p(X) の根とは成り得ない。なぜなら、それ以外の元 \omega^k は、\omega^{mk} = 1 となる 1\le m \lt n が存在するので(*2)、p(\omega^k)=0 と仮定すると X^{m}-1 = p(X)q(X) が成立するが、これは、p(\omega)=0, \omega^{m} \ne 1 に矛盾する。

そこで、p(X) の相違なる根のすべて \{\omega^t \mid t\in G'\subseteq G\} に対して、写像の集合 \{\sigma_t \mid t \in G'\} \sigma_t(\omega) = \omega^t で定義すると、これらは、{\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right) の部分集合となる。(\omega\omega^t は同一の最小多項式を持つので、F(\omega)F(\omega^t) は同じ剰余体 F[X]/p(X) と同型となる事に注意する。)

さらに、F(\omega)F 上の分解体なので、定理5.2より、F(\omega)/F はガロア拡大であり、|{\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right)|=[F(\omega):F]=\deg p(X) となる。上記で定義した写像 \{\sigma_t \mid t \in G'\} は、p(X) の根の個数、つまり、\deg p(X) と同数だけあるので、{\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right)=\{\sigma_t \mid t \in G'\} が成立する。

最後に、次の写像を定義すると、これは、単射準同型であることがわかる。

 {\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right)\rightarrow G\sigma_t \mapsto t

これで、{\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right)G の部分群に同型であることが示された。

(*1) tn が互いに素の時、at=bt \pmod{n} \Rightarrow a=b \pmod{n} が成立する。したがって、\omega^{at}=\omega^{at} \iff a=b \pmod{n} となるので、\{1,\omega^t,\omega^{2t},\cdots,\omega^{(n-1)t}\} はすべて相違なる元となる。

(*2) kn は互いに素ではないので、最大公約数を d として、k=a_1d,\,n=a_2d1\le a_2\lt n)となる。したがって、a_2k = a_1n より、\omega^{a_2k} = 1
――――――――――

この補題を基にして、べき根拡大と可解群の関係が得られる。多項式の解がべき根を用いて表現できるかどうかを判定する、ガロア理論の根幹の1つとなる。

定理6.1
――――――――――
多項式 f(X) = X^n-a \in F[X] の分解体を E とする時、{\rm Aut}(E/F) は可解群となる。このような拡大をべき根拡大とよぶ。

また、\alpha^n = a を満たす \alpha\in E を用いて、E=F(\alpha,\omega) が成立する。ここに、\omega は1の原始 n 乗根であり、\{\alpha, \alpha\omega, \alpha\omega^2,\cdots,\alpha\omega^{n-1}\} \subset Ef(X) の相違なる n 個の根となる。

(証明)
補題6.2の \omega \in E を用いて、体の拡大の列 E \supset F(\omega) \supset F を構成した上で、次の自己同型群の列が可解群の条件を満たすことを証明する。

 {\rm Aut}(E/F) \supset {\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right) \supset \{1\}

まず、右側のペアによる剰余群 {\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right)/\{1\}、すなわち、{\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right) がアーベル群であることを示す。

EX^n-a の分解体なので、\alpha^n = a を満たす \alpha \in E が存在する。この時、\{\alpha, \alpha\omega, \alpha\omega^2,\cdots,\alpha\omega^{n-1}\} は、n 個の相違なる元で、すべて X^n-a の根になっている。つまり、F(\omega,\alpha)X^n-a の分解体であり、分解体の一意性(定理5.3)より、E=F(\omega,\alpha) とおける。したがって、{\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right) の元は、\alpha に対する作用のみで定義される。この時、任意の \tau,\sigma \in {\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right) が可換になることが、次の議論からわかる。

まず、f\left(\tau(\alpha)\right)=\tau\left(f(\alpha)\right) = 0 より、\tau(\alpha)^n = a。したがって、f\left(\frac{\tau(\alpha)}{\alpha}\right)^n = 1 より、\frac{\tau(\alpha)}{\alpha} \in F(\omega) となる。したがって、

 \sigma\circ\tau(\alpha)\left\{\sigma(\alpha)\right\}^{-1} = \sigma\circ\tau(\alpha)\sigma(\alpha^{-1})=\sigma\left(\frac{\tau(\alpha)}{\alpha}\right) = \frac{\tau(\alpha)}{\alpha}

よって、\sigma\circ\tau(\alpha)=\frac{\sigma(\alpha)\tau(\alpha)}{\alpha}。この右辺は \sigma\tau について対称になっているので、\sigma\circ\tau(\alpha)=\tau\circ\sigma(\alpha) が成立する。

続いて、左側のペアによる剰余群 {\rm Aut}(E/F) / {\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right) がアーベル群になることを示す。

体の拡大の列 E \supset F(\omega) \supset F において、F(\omega) は、X^n-1 \in F[X] の分解体なので、定理5.2より、F(\omega)/F はガロア拡大である。したがって、定理4.1(1)より、{\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right){\rm Aut}(E/F) の正規部分群であり、上記の剰余群が考えられる。さらに、定理4.2より、次の同型が成立する。

 {\rm Aut}(E/F) / {\rm Aut}\left(E/F(\omega)\right) \cong {\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right)

補題6.2より、{\rm Aut}\left(F(\omega)/F\right) はアーベル群なので、これで定理が証明された。
――――――――――

文献によっては、X^n-a の根の1つのみを加えた拡大をべき根拡大と定義している場合もあるが、ここではすべての根を加えた分解体として定義している点に注意。これにより、以降の各種定理の証明が少し簡単になる。(根の1つのみを加えた定義の場合は、証明の中で、すべての根を加えた体まで拡張して議論する必要がある。)


――――――――――
定理6.1で存在が保証される \alpha は、一意ではない点に注意する。たとえば、f(X) = X^3 - 2 \in {\mathbf Q}[X] の根は、\omega を1の原始3乗根として、\{\sqrt[3]{2}, \sqrt[3]{2}\omega, \sqrt[3]{2}\omega^2\} であり、\alpha = \sqrt[3]{2} とすると、分解体は、E = {\mathbf Q}(\sqrt[3]{2}, \omega) となる。一方、\alpha = \sqrt[3]{2}\omega として、E= {\mathbf Q}(\sqrt[3]{2}\omega, \omega) としても結果は同じである。
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