これは何かというと
最近何やら量子計算機の話題がよく盛り上がるということで、一度、まじめに教科書を読んでみたらこれが意外と面白くて、数ヶ月熱中して読み込んでしまいました。特に私の場合は、量子計算機そのものよりも、量子計算機の研究を通じて、昔々勉強していた古き良き「量子力学」のより本質的な理解が得られる可能性にとてつもなく興奮してしまいました。
で、せっかくなので勉強したことをボチボチと情報発信しだしたら、これまた意外にも、私と同様に量子計算機を教科書レベルで勉強してみたい、という一般の方々がたくさんいることに気がつきました。
というわけで、せっかくなので、どなたかの参考になればということで、私が勉強につかった資料などを公開してみます。とはいえ、あくまで個人的なまとめということで、まずは、私が勉強した時系列でならべておきます。
量子光学
実は、量子計算機を勉強しようとおもったきっかけは、以前、日本で話題になった「コヒーレントイジングマシン」なんです。当時、あれは本当に量子効果を利用しているのかと世間で話題になったのですが、私も実際の原理がどうなっているのかを知りたくて、関連する資料やら論文やらを読んでみたのですが、これがまた、1qbit たりとも理解できなかったのですね。「いやぁ。これはくやしい。何を勉強すればこれが理解できるのだ」と思いながら、論文の参考文献をたどっていくと、まずは量子光学の基礎が必要だと気づいて、さっそく読んだのがこちらになります。
ちなみに、ここで学んだ内容の初歩的な部分は、同人誌のネタとして公開させていただきましたw
で、上記の教科書(同人誌の方ではないですよ)の中で、(ゲート型の汎用的な)量子計算機についての話題があり、じゃあ次は、量子計算機そのものを勉強してみたいなぁ。。。と思いつつ、こちらの勉強会に参加しました。
すると、これがまた、実際に研究をされている専門家の講義が無料で受けられるという、なんとも贅沢なイベントで、ここで、量子計算機と量子力学のつながりが私の中で割と明確になりました。
量子計算機
で・・・・じゃあ次はせっかくだから、ちゃんとした教科書を読んでみようということで、上記の勉強会で紹介された教科書を読み始めました。
いや。この本、めちゃめちゃすばらしいです。どうすばらしいかは、書きつくせないので書きませんが、あまりのすばらしさに、途中から演習問題もまじめに解きながら読むようになるほどでした。
ただ・・・・残念なことに、最後の第12章(量子情報理論の章)だけは、難易度が高く、どうしても理解が追いつきませんでした。。。。
古典情報理論
で、これはどうしたものかと思い、Further Reading の節をじーーーーと眺めていると、こちらの古典情報理論の教科書が推薦されていたんですね。
やはりここは、古典情報理論から勉強のやりなおしかぁー、と思って、思い切ってこの本を読み始めたところ、これもまた非常にすばらしい教科書でした。おもわず演習問題を端から順番に解いてみるぐらいのすばらしさです。(・・・ただ、この本、演習問題がめちゃめちゃに多いんですよね。実際に解いたのはごくごく一部です。)
ちなみに、古典的な情報理論については、昔々、機械学習の勉強をはじめた頃に下記の本を読んだことがあって、これでだいたいわかったつもりになっていたのですが、まったく本質を理解できていなかったことに気付かされました。。。
arXiv
で、このあたりから、そろそろ論文にも手を出すか・・・と思って、arXiv をウロウロするようになってきたのですが、冒頭で触れた、「量子力学のより本質的な理解が得られる可能性」という点で、特に刺激をうけたのが下記の2本です。同じ著者による、2012年と2018年のエッセイなのですが、6年という期間における発展と、それでもやはり本質的に変わらない困難、という観点で非常に味わい深いものがあります。
・Quantum computing and the entanglement frontier
・Quantum Computing in the NISQ era and beyond
この他には、ちょっとだけ自分でも手を動かしてみたやつ。
それから、おそらくは、若干、釣っぽいタイトルで180ブックマークを達成した(てへぺろ)こちらの論文が、思い出深い青春の1ページです。
あと、若干毛色が変わりますが、量子イジングモデルもやっぱり、基礎はおさえておきたいなぁ、と思いつつ、こちらの論文(Thesis ですね!)
・Study of Optimization Problems by Quantum Annealing
を参考にしつつ、量子アニーリングの(しょぼい)シミュレーションを実装したりしてみました。
量子力学入門
で・・・、実は、前述の青春の1ページで直面したのが、ブックマークに添えられた「なるほどわからん」という多数のコメントでした。「いやぁ。なんだか知らんがこれは悔しい。『なるほどよくわかった』という反応を増やすには何をすればいいのだ・・・・」としばし思い悩んで、書き始めたのがこちらのシリーズです。
真面目な話、量子計算機を理解するには、量子力学の理解は必須だと個人的には思っているのですが、とはいえ、物理学としての量子力学(波動関数が登場するようなやつ)と量子計算の理屈を理解する上で必要な量子力学の知識には、すこしばかり距離があるんですよね。。。。私の場合は、もともと普通の量子力学を勉強した過去があるので、非常にラッキーだった気がします。ここのギャップを埋める活動は、これからも何かしらやってみたいなー、と思ったりもしています。
量子情報理論
で、古典情報理論の復習もできて、そろそろ量子情報理論に再挑戦しようかということで、今ちょうど読み始めたのが、Witten 先生のこちらのレビューです。
・A Mini-Introduction To Information Theory
QCQI の第12章と比較しながら読み進めようとしているのですが、やはり量子情報は、理論的にもまだよくわかっていない事も多いようで、問題意識を明確にして読み込まないと、なかなか理解が深まらないようです。がんばります。
量子プログラミング
Cirq に Phase Estimation のサンプルコードを Contribute したぜー。いえーい。
この後は・・・?
いやぁ。まだまだ先は長いようですが、この自分の中の盛り上がりが続くうちは、色々と勉強していくつもりなので、このエントリーもきっとアップデートされていくことと思います。末永くお付き合いください。