めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

「通訳入門」の受講記録を書いてみる(その1)

何の話かというと

サイマルアカデミーという通訳専門学校の「通訳入門」短期集中コース(4時間x3回)を自腹で受講しはじめたので、そこで学んだことを吐き出します。今回は、第1回の4時間分です。

全体の様子

講師はプロの通訳の方で、Native Languageは英語。講義は、英語と日本語の両方で行います。英語と日本語を切り替えながら使う練習も込めて、だそうです。受講生は10名程度ですが、LL機材があるので、練習は各人で行ないます。

通訳として基本の態度として、講義中にしつこく指摘されたのは、このあたり。

・誰かが話している時は、とにかくその内容に集中して、理解した内容を記憶に残すように努力する(間違っても他の事は考えたりしない)。
→ 通訳する必要がないと思っていた部分に対して、いきなり通訳を求められる事もあるので。

・filler wordは、絶対に使わないように全力で意識する。必要のない限りゼスチャーも入れない。
→ 講義中は、訓練のために、通訳以外の一般的な会話でもこれを求められます。(えばんげりおん的なプレゼンに慣れていると、ゼスチャー禁止が意外と難しい。。。。)

やったこと

(1)音読:A4で10ページ程度の講演のtranscriptをLL機材で録音しながら音読(20分程度)
→ まずは、一定時間、英語で話しつづけるトレーニング。同通だと15分程度での交代が標準だそうです。

(2)日本語のShadowing:A4で5ページ程度の講演のtranscriptをLL機材でShadowing(20分程度)
→ 話者のFiller wordをはぶいて、なるべく自然に聞こえるようにタイミングをとりながら話すように練習しました。

(3)日英の逐次訳:A4で1ページの文章(4段落)を段落ごとに逐次訳の練習
LL機材で練習 → 講師のサンプル訳 → 訳し方についてディスカッション → LL機材で練習

以下に全文を引用しておきます。

「正確な翻訳」とはどういうものなのでしょうか。辞書に出てくる単語の意味にのっとった訳語、言語の文法に忠実な構文を「正確な翻訳」と考えている人もいます。しかし、実際に自分でやってみればわかりますが、そんな態度で翻訳をしたら、日本語としてわかりにくくなるどころか、まともな日本語にすることすら難しいはずです。とにかく、たとえば英語と日本語という言語の性質が非常に違っている以上、そんなやりかたで普通の日本語への翻訳などできるわけがありません。

翻訳というのは、そもそも言葉や文法を訳すのではなく、テキストの意味を移し変える作業のはずです。これは、日本語の難しい言葉をわかりやすく言い換える場合でも、外国語を日本語に、あるいは、日本語を外国語に翻訳する場合でも、常に変わらない原則です。

テキストの意味を訳すのが翻訳だと言いましたが、それはもとのテキストの意味をできるだけ過不足なく日本語にするうえで必要ならば、個々の単語の辞書的な「正確さ」を犠牲にしてもかまわないということです。事実、辞書に出ていない訳語を考えだすことなどは、プロの翻訳者が日常的にやっていることです。また、文法的にも、もとのテキストの肯定文を否定文にしたり、疑問文を平叙文にすることなども、ごく当たり前に行われています。

ですから、翻訳とは言葉を訳すのではなく意味を訳すものだということは、もはやことさらあらためて言うまでもない常識だと考えていいと思います。

適切な訳語がすぐに思いつかずに苦労したのはこの辺。

  • 辞書に出てくる単語の意味にのっとった訳語

literal translation of words using its meaning in a dictionary.

  • もとのテキストの意味をできるだけ過不足なく日本語にする

translate the meaning of the original text without exaggeration and without omission.

  • 個々の単語の辞書的な「正確さ」を犠牲にしてもかまわないということです。

you can sacrifice the literal meaning of each word.

  • 辞書に出ていない訳語を考えだす

to come up with a new word selection

  • 肯定文を否定文にしたり、疑問文を平叙文にすること

to change an affirmative expression into a negative, and to change an interrogative to a declarative

(4)英語のShadowing:(1)と同じ素材をLL機材でShadowing
→ ゴールは、自分の音声だけを後で聞き直して、自分でDictationして元の文章が再現できるレベル

ちなみに

なんでまた通訳のコースなんか受講しているかというと、JTF2015の英会話カフェで、下記のプレゼンを英語でやらせていただいたのがきっかけなんですね。

もともと、日本のIT業界が他国に比べて英語力が低いのは、いろんな意味で相当な損失というか、このままだと日本のIT業界はまぢでやばいんじゃないかという思いがあって、逆に言うと、もっと普通に英語を使いこなす人が増えれば、日本のIT業界を根本的に変えられる可能性があるんじゃないかとか、そんな事を考えながら、このプレゼンを用意していました。

で、そんなプレゼンの中で、特に意識せずに、「I'm not a professional (of English education)」という発言をしたところ、オーディエンスの方に「中井さんに "I'm not a professional" とは言って欲しくないですよー」とありがたい言葉をいただきました。この言葉を聞いて、「こここここここれは、もっと自信を持って "I'm a professional" と言えるだけのレベルに達して、自分がロールモデルになれということかー」と勝手に開眼して、まずは、英語を本職にするプロがどういう事を考えているのか知ってやろうという思いで受講を決断した次第です。(ついでに、これで自分の英語力も高まったら一石二鳥だし。)

この投資をみなさんにも還元する、うまい機会がつくれないかなーとか考えていますので、何かアイデアある方はお声がけください。