めもめも

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二重級数の順序交換に関する定理

二重数列 a_{ij}\ge 0\,(i,j=1,2,\cdots) について、各行の和 \displaystyle r_i = \sum_{j=1}^\infty a_{ij} < \infty が存在して、さらに、これらの和 \displaystyle S = \sum_{i=1}^\infty r_i < \infty が存在するとします。この時、列を先に計算しても同じ値に収束する、あるいは、一列に並べ替えて和をとっても同じ値に収束することが言えます。


定理1
各列の和 \displaystyle c_j = \sum_{i=1}^\infty a_{ij} < \infty が存在して、これらの和は \displaystyle \sum_{j=1}^\infty c_j = S となる。

(証明)

任意の j に対して、\displaystyle r_i = \sum_{j'=1}^\infty a_{ij'} \ge a_{ij} なので、優級数定理により、\displaystyle c_j = \sum_{i=1}^\infty a_{ij} < \infty は確かに存在する。

任意の \epsilon>0 に対して、任意の自然数 M を固定した時、j=1,\cdots,M のそれぞれについて、\displaystyle \lim_{N\to\infty}\sum_{i=1}^Na_{ij} = c_j であることから、

 \displaystyle N \ge N_j \ \Rightarrow\ c_j - \sum_{i=1}^N a_{ij}   < \frac{\epsilon}{M}

を満たす N_j が取れる。N' = \max(N_1,\cdots,N_M) とすると、

 \displaystyle N \ge N' \ \Rightarrow\ c_j - \sum_{i=1}^N a_{ij}   < \frac{\epsilon}{M}

  \displaystyle \Rightarrow \sum_{j=1}^M c_j < \sum_{j=1}^M\sum_{i=1}^Na_{ij} + \epsilon \le \sum_{i=1}^N\sum_{j=1}^\infty a_{ij}+\epsilon = \sum_{i=1}^N r_i  + \epsilon \le S+\epsilon

最後の表式は N' に依存しないので、任意の自然数 M に対して、\displaystyle \sum_{j=1}^M c_j < S+\epsilon が成り立つ。従って、M\to\infty の極限で、\displaystyle \sum_{j=1}^\infty c_j \le S+\epsilon となり、これが任意の \epsilon>0 に対して成り立つことから、

 \displaystyle \sum_{j=1}^\infty c_j \le S --- (1)

が得られる。

一方、任意の \epsilon>0 に対して、任意の自然数 N を固定した時、任意の自然数 M について、

 \displaystyle \sum_{j=1}^M c_j = \sum_{j=1}^M\sum_{i=1}^\infty a_{ij} \ge \sum_{j=1}^M\sum_{i=1}^Na_{ij}

なので、M\to\infty の極限で、

 \displaystyle \sum_{j=1}^\infty c_j \ge\sum_{i=1}^N\sum_{j=1}^\infty a_{ij}=\sum_{i=1}^Nr_i

が得られる。\displaystyle \lim_{N\to\infty}\sum_{i=1}^Nr_i = S より、十分大きな N を取ると、

 \displaystyle \sum_{j=1}^\infty c_j \ge \sum_{i=1}^Nr_i > S-\epsilon

となり、これが任意の \epsilon >0 に対して成り立つことから、

 \displaystyle \sum_{j=1}^\infty c_j \ge S --- (2)

が得られる。(1)(2) より、\displaystyle  \sum_{j=1}^\infty c_j = S が言える。
(証明終わり)


定理2

 \displaystyle S_N = \sum_{i=1}^N\sum_{j=1}^Na_{ij} として、\displaystyle\lim_{N\to\infty}S_N = S が成り立つ。

(証明)

 \displaystyle A_N = \sum_{i=1}^N\left(\sum_{j=1}^\infty a_{ij}-\sum_{j=1}^Na_{ij}\right) = \sum_{i=1}^N\sum_{j=N+1}^\infty a_{ij}

とすると、

 \displaystyle S_N + A_N = \sum_{i=1}^N\sum_{j=1}^\infty a_{ij} = \sum_{i=1}^Nr_i

が成り立つ。\displaystyle \lim_{N\to\infty}\sum_{i=1}^Nr_i = S より、十分大きな N を取ると、

 \displaystyle S_N+A_N > S-\epsilon --- (1)

となる。

一方、\displaystyle \lim_{N\to\infty}\sum_{j=1}^Nc_j = S より、十分大きな N に対して、

 \displaystyle \epsilon > S-\sum_{j=1}^Nc_j = \sum_{j=N+1}^\infty c_j = \sum_{j=N+1}^\infty\sum_{i=1}^\infty a_{ij} \ge \sum_{i=1}^N\sum_{j=N+1}^\infty a_{ij} = A_N

従って、(1) と併せて、

 \displaystyle S_N > S-\epsilon-A_N > S-2\epsilon

となり、N\to\infty の極限で、\displaystyle \lim_{N\to\infty}S_N \ge S-2\epsilon が得られる。これが任意の \epsilon に対して成り立つことから、

 \displaystyle\lim_{N\to\infty}S_N \ge S --- (2)

が得られる。一方、\displaystyle \lim_{N\to\infty} \sum_{i=1}^Nr_i = S より、任意の \epsilon > 0 に対して、十分大きな N で、

 \displaystyle S_N \le S_N + A_N = \sum_{i=1}^Nr_i < S + \epsilon

となり、N\to\infty の極限で、\displaystyle\lim_{N\to\infty} S_N \le S+\epsilon が得られる。これが任意の \epsilon に対して成り立つことから、

 \displaystyle \lim_{N\to\infty} S_N \le S --- (3)

が得られる。(2)(3) より、\displaystyle \lim_{N\to\infty} S_N = S が言える。
(証明終わり)


逆に、\displaystyle\lim_{N\to\infty}S_N = S が存在する時に、\displaystyle\sum_{i=1}^\infty r_i = \sum_{j=1}^\infty c_j = S となる事も証明できます。(下記の「定理2」を参照)

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