めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

IT専門用語の日本手話(JSL)表現に関するメモ

speakerdeck.com

先日、社内で、一般人向けレベルの内容で、30分程度の「機械学習入門」のレクチャーを行いました。上記資料のタイトルにあるように、日本手話(JSL)でプレゼンしました。(オーディエンスは、エンジニア・非エンジニア含めたJSL話者7名。ろう者にも参加してもらいました。)

JSLを用いた理由はさておいて、発表後のディスカッションの際に、IT関係の専門用語の手話表現に関して、いろいろ興味深い会話があったので、記憶をいくつかダンプアウトしておきます。(特に内容の整理はしていません。)

なお、以下に出てくる用語は、基本的には、対応する日本語単語がプレゼン資料上にあるので、初出の際は、投影スライド上の日本語単語の指差しを加えています。また、私自身は、日本語が第一言語で、IT関連の事は、だいたい日本語か英語で考えているので、以下の内容は、IT関連の日本語/英語をJSLに翻訳する技術、という視点で捉えて書いています。

※注意事項:ここで議論している手話表現は、公式のものではなく、また、公式の表現を決めようと意図するものでもありません。他の手話話者とディスカッションした内容を参考としてご紹介するものです。ディスカッションには、ろう者、および、コーダの方にも参加していただきました。

「関数」の表現

今回のプレゼンでは、プログラミング言語ではなく、数学用語としての「関数」として出てきました。なので、私は、「皆さん昔、数学で勉強したと思います」と数学の用語であることをほのめかした(?)後に、「かんすう」と指文字を示して、「関係/数」と表しました。その後は、すべて「関係/数」で統一。

一方、エンジニアのオーディエンスからは、「自分なら「機能」を使う」とのご意見。英語で言うと Function で、プログラミング言語の場合は、日本語話者でも「ファンクション」と言うことはあるので、確かに専門家にはそちらの方がストレートかも知れません。とは言え、今回の一般人向けのプレゼンであれば「関係/数」の方が分かりやすいのでは、というのは、非エンジニアオーディエンスからのコメントでした。

あとは、視覚言語の立場からは、漢字をベースにして、「関(/問題/ の手話表現と同じ)/数/」の方が自然というご意見もいただきました。

「ディープラーニング(深層学習)」の表現

日本語でプレゼンするときは(個人的に「深層学習」という大仰な和訳が好きでないので)「ディープラーニング」で通していますが、今回は、「でぃーぷらーにんぐ」と指文字で示した後、「日本語で言うなら、「深い/学習」ですね。」と言って、あとは「深い/学習」で統一。

ここは、表現方法については、特にコメントありませんでしたが、「しんそうがくしゅう」の口形を付けてもよいのでは、というご意見がありました。(私は、個人的に、日本語の口形を付けるのが苦手で、実はこれに限らずよく指摘されるのですが・・・)

ちなみに、「Deep Mind」という会社があるのですが、これは「深い/考え」で表現すると、エンジニアのオーディエンスに教えてもらいました。(なるほど。)

「構造化データ・非構造化データ」の表現

発表中は、「こうぞうか(指文字)/データ」でやっていたのですが、発表後に「構造/データ」「非/構造/データ」でよいのでは、とのご意見。ここは、私の勉強不足でこの表現が「構造」という意味で使えることを知りませんでした。ご指摘ありがとうございます。(言い訳をすると、この表現は、建築/アーキテクチャーが本来の意味で、データベースエンジニアの方は分かるように、「構造化データ」と言った場合の「構造」とはちょっとニュアンスが違うんですよね・・・。どちらかと言うと「組織(仕組み)」の方が近い?? なので、データベース用語としての「構造」にピタッとあう表現が思いつかずに指文字にしていました。)

「ニューラルネットワーク」の表現

(いくつか議論はあったのですが)結論から言うと、「神経/ネットワーク」でOK。

関数の「入力」「出力」の表現

発表中は、「入る/数」「出る/数」を使いました。非エンジニアの方から、出力については、「現れる/数」(「現れる」は「表す」の手のひらを自分に向けたやつ)の方が、計算結果が(自分に)得られるというニュアンスが伝わって良いのでは、というご意見がありました。一方、今回は、ニューラルネットワークの中で、複数の関数が連続して入出力を受け渡していくという文脈なので、私の表現でニュアンスが伝わると言うコメントもありました。

もしかしたら、非エンジニア向けには、「数学としての関数を復習する」ページでは、「現れる/数」を使っておいて、その後、ニューラルネットワークを説明する部分で、「出る/数」に表現を移行するというテクニックがあれば、ベストだったのかも知れません。

(補足)この記事をアップした後、社内の人からコメントいただいて改めて考えたところ、ニューラルネットワークで計算が進む様子は、/入る 計算 現れる/ (掴んで移動する CL) /入る 計算 現れる/ (掴んで移動する CL) という水平方向の繰り返しでいけるんじゃないかという気がしてきました。

「パラメーター」の表現

うまい表現が見つからなかったので、初出の際に「「ぱらめーたー(指文字)」というのは、記号「θ(空書)」で表します」と言って、あとは、「θ(空書)」で統一。

「変数」の意味では「変わる/数」、いわゆる(ハイパーパラメーター的な意味での)パラメーターでは「調整/数」というご意見もいただきました。今回の文脈だと、「調整/数」でいけるかもしれません。

「アルゴリズム」の表現

発表中は、指文字で統一。ディスカッションの際に、初出は「指文字+口形」で、2回目以降は、「あるご(指文字)+あるごりずむ(口形)」という短縮バージョンでもよいかも、というコメントをいただきました。

おまけ

今回の発表にはないのですが、某弊社内では、TensorFlow の表現はこちらです。(わかる人にはわかるやつw)