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めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

ガロア理論のメモ(その8):n次方程式の可解性

n次方程式の一般解

1次式の積に因数分解された多項式を形式的に展開する。

 \prod_{i=1}^n(X-\alpha_i) = X^n -s_1X^{n-1} + \cdots +(-1)^n s_n

この時、係数 s_k は、基本対称式で与えられる。

 s_k=\sum_{i_1\lt\cdots\lt i_k}\alpha_{i_1}\cdots\alpha_{i_k} ――― (1)

たとえば、s_1=\alpha_1+\cdots+\alpha_ns_2=\alpha_1\alpha_2+\cdots+\alpha_{n-1}\alpha_ns_n=\alpha_1\cdots\alpha_n などとなる。

したがって、(1) を \{\alpha_k\} について逆解きできれば、解の公式が得られることになる。ただし、有理数係数の多項式を一般に解くには複素数が必要となることから、一般に、\{s_k\} が属する体は、\{\alpha_k\} が属する体よりも「小さい」と考えられる。これは、拡大体を用いて次のように表される。

適当な体 K (実用的には有理数体 {\mathbf Q} を想定する)に記号 \{\alpha_1,\cdots,\alpha_n\} を付与した拡大体 E=K(\alpha_1,\cdots,\alpha_n) を考えて、{\rm Aut}(E) の部分群として、 \{\alpha_1,\cdots,\alpha_n\} の置換群(対称群) S_n を考える。すると、E の中で S_n で固定される部分体は、F=K(s_1,\cdots,s_n) に一致する。(s_k は (1) で定義されるものとする。)

つまり、{\rm Aut}(E/F)=S_n であり、拡大 E/F はガロア拡大となる。また、その定義より、E は、F 上の多項式 f(X)=X^n -s_1X^{n-1} + \cdots +(-1)^n s_n の分解体になっている。

したがって、定理7.1より、多項式 f(X) のガロア群 {\rm Aut}(E/F) = S_n が可解群であることが、f(X) が代数的に可解であることと同値になる。f(X) が代数的に可解である場合、\{\alpha_k\} は、F=K(s_1,\cdots,s_n) の元に対する四則演算とべき根の操作で表現できることになる。

一般に n \ge 5 の場合、対称群 S_n は可解群にならないことが知られており、これより、5次以上の多項式について、解の公式(一般解)を四則演算とべき根で表現することはできないとわかる。

逆に n \le 4 の場合、対称群 S_n は可解群であり、4次以下の多項式は、四則演算とべき根で一般解を表現できることになる。これは、具体的な表現方法を示すものではないが、定理7.1の後半部分の証明、および、補題7.1の証明は、可解群の列が与えられた時に、対応するべき根拡大を構成する手続きを与えている。この後は、2次方程式と3次方程式の場合に、対応するべき根拡大を具体的に構成してみる。

2次方程式

次の多項式を考える。

 f(X)=(X-\alpha_1)(X-\alpha_2) \in {\mathbf Q}(\alpha_1,\alpha_2)[X] ――― (1)

これを展開すると、次が得られる。

 f(X)=X^2-(\alpha_1+\alpha_2)X + \alpha_1\alpha_2 \in {\mathbf Q}\left(\alpha_1+\alpha_2,\alpha_1\alpha_2\right)[X] ――― (2)

体の拡大 {\mathbf Q}(\alpha_1,\alpha_2) / {\mathbf Q}\left(\alpha_1+\alpha_2,\alpha_1\alpha_2\right) のガロア群は、2次対称群 S_2\alpha_1\alpha_2 の入れ替え)であり、正規部分群の列 S_2\supset \{1\} により可解群となる。つまり、(2)は代数的に可解である。

なお、体 {\mathbf Q}\left(\alpha_1+\alpha_2,\alpha_1\alpha_2\right)[X] の範囲で計算する際は、\alpha_1\alpha_2 は、\alpha_1+\alpha_2\alpha_1\alpha_2 という組み合わせのみで扱う必要があり、当然ながら、この範囲では、\alpha_1\alpha_2 そのものを得ることは不可能である。

一方、E={\mathbf Q}(\alpha_1,\alpha_2),\,\,F={\mathbf Q}\left(\alpha_1+\alpha_2,\alpha_1\alpha_2\right) と表記して、[E:F] = |{\rm Aut}(E/F)| = |S_2| = 2 より、多項式 X^2-a \in F の根 \xi \in E が存在して、E=F(\xi) となる。この \xi は、2乗した際に S_2 で不変、つまり、\alpha_1\alpha_2 の対称式になることから、\xi 自身はこれらの反対称式と想像される。そこで、\xi = \alpha_1 - \alpha_2 と置いてみるとうまくいく。実際、F(\xi) の範囲であれば、次のように、\alpha_1\alpha_2 を構成することが可能であり、

 \alpha_1 = \frac{1}{2}\left\{(\alpha_1+\alpha_2) + \xi\right\}

 \alpha_2 = \frac{1}{2}\left\{(\alpha_1+\alpha_2) - \xi\right\}

E=F(\xi) が成立する。さらに、\xi は、X^2 - \left\{(\alpha_1+\alpha_2)^2-4\alpha_1\alpha_2\right\} \in F[X]E=F(\xi) における根になっている。

ここで、\xi = \sqrt{(\alpha_1+\alpha_2)^2-4\alpha_1\alpha_2} と表記すると、2次方程式の解の公式が得られる。

 \alpha_1 = \frac{1}{2}\left\{(\alpha_1+\alpha_2) + \sqrt{(\alpha_1+\alpha_2)^2-4\alpha_1\alpha_2}\right\}

 \alpha_2 = \frac{1}{2}\left\{(\alpha_1+\alpha_2) - \sqrt{(\alpha_1+\alpha_2)^2-4\alpha_1\alpha_2}\right\}

具体的な数値係数の2次方程式に上記の公式を当てはめる操作は、E{\mathbf C} に同型に埋め込んで E \rightarrow {\mathbf C} という同型な置き換えを計算していることにほかならない。(\mathbf{Q} の代数的閉包は \mathbf{C} と同型になるという事実を用いている。)

3次方程式

まず、一般論を整理する。E=K(\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3)F=K(\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3の基本対称式) として、{\rm Aut}(E/F)=S_3 であるが、これは次の正規部分群の列において可解群となる。(A_3 は偶置換のみの部分群)

 S_3\supset A_3\supset \{1\}

そして、この拡大列は、次の自己同型群に対応する。

 {\rm Aut}(E/F) \supset {\rm Aut}(E/M) \supset {\rm Aut}(E/E) = \{1\}

さらに、{\rm Aut}(M/F) \cong {\rm Aut}(E/F) / {\rm Aut}(E/M) \cong S_3/A_3 \cong S_2 が成立する。

したがって、ある中間体 M が存在して、[M:F] = |S_2| = 2 となるので、2次方程式の時と同じ議論で、

 M=F(\delta)\delta \in E は、X^2-a \in F[X] の根)

が成立する。さらに、{\rm Aut}(E/M) \cong A_3 で、[E:M] = |A_3| = 3 となるので、MX^3-1 でべき根拡大した M(\omega)\omega は1の原始3乗根)を用いて、M(\omega) から E(\omega) へのべき根拡大

 E(\omega)=M(u, \omega)u\in E(\omega) は、X^3-b \in M(\omega)[X] の根)

が成立する。(この時、{\rm Aut}(E(\omega)/M(\omega)) = {\rm Aut}(E/M) \cong A_3 となる。)

つまり、E(\omega)=M(u, \omega) \supset M(\omega) \supset M = F(\delta) \supset F はべき根拡大の列であり、E(\omega) \supset E であることから、3次方程式は代数的に可解であることが示された。

ここで、\delta を具体的に構成する。{\rm Aut}(E/M) = {\rm Aut}\left(E/F(\delta)\right) = A_3 より、\delta は、\{\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3\} の偶置換で不変でなければならない。そこで、

 \delta=(\alpha_1-\alpha_2)(\alpha_2-\alpha_3)(\alpha_3-\alpha_1)

を考えると、これは、奇置換で符号を変えて、偶置換で不変になる。この時、\delta^2 は、偶置換でも奇置換でも不変であり、{\rm Aut}(E/F) = S_3 で不変なことから、\delta^2 \in F であることが分かる。(実際、\delta^2 は、\{\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3\} について対称なので、基本対称式で表現できることはすぐにわかる。)つまり、\delta は、X^2-\delta^2 \in F[X] の根であり、

 M=F(\delta)

は、べき根拡大を与える。

次に、補題7.1の証明にしたがって、M(\omega) から E(\omega) へのべき根拡大を構成する。まず、\sigma = (1,2,3) \in A_3 \cong {\rm Aut}(E(\omega)/M(\omega))F(\omega) 上の3次元ベクトル空間の線形写像とみなして、固有方程式 \sigma(u) = \omega u を満たす固有ベクトル u を計算する。u=a_1\alpha_1+a_2\alpha_2+a_3\alpha_3 とおいて、直接に計算すると、a_2=\omega a_1,\,a_3=\omega^2 a_1 が得られる。したがって、次の u が固有ベクトルとわかる。

 u=\alpha_1 + \omega \alpha_2 + \omega^2 \alpha_3

この時、\sigma(u^3)=\{\sigma(u)\}^3 = \omega^3 u^3 = u^3 であることから、u^3 \in M(\omega) となる。

したがって、

 E=M(u, \omega)

は、X^3 - u^3 \in M(\omega)[X] のべき根拡大となる。

以上でべき根拡大の列が構成できたが、一般的な解の公式を得るには、もう少し工夫がいる。\sigma の固有値は、\{1,\omega,\omega^2\} の3種類なので、それぞれに対する固有ベクトルを求めると次が得られる。

 a=\alpha_1 + \alpha_2 + \alpha_3 \in F

 u=\alpha_1 + \omega \alpha_2 + \omega^2 \alpha_3

 v=\alpha_1 + \omega^2 \alpha_2 + \omega \alpha_3

u と同じ議論により、これらはすべて、a^3, u^3,v^3 \in F(\omega) となる。したがって、uvM(\omega)=F(\delta,\omega) の元の3乗根として表示した後、次の計算により、\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3 を個別に計算することができる。

 \alpha_1 = \frac{1}{3}(u+v-a)

 \alpha_2 = \frac{1}{3}(\omega^2 u+\omega v-a)

 \alpha_3 = \frac{1}{3}(\omega u+\omega^2 v-a)