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めもめも

このブログに記載の内容は個人の見解であり、必ずしも所属組織の立場、戦略、意見を代表するものではありません。

ガロア理論のメモ(その2):ガロア群

体の自己同型群とガロア群

E について、E から E への環としての自己同型写像全体を {\rm Aut}(E) とすると、これらは写像の合成を積として群を構成する。これを体 E の自己同型群と呼ぶ。

なお、\phi \in {\rm Aut}(E) は、\alpha_1,\alpha_2 \in E に対して、次を満たす全単射の写像である。

 \phi(\alpha_1+\alpha_2)=\phi(\alpha_1)+\phi(\alpha_2)

 \phi(\alpha_1\alpha_2)=\phi(\alpha_1)\phi(\alpha_2)

また、F の拡大体 E において、F の元を動かさない自己同型写像全体 {\rm Aut}(E/F) は、{\rm Aut}(E) の部分群となる。これを体の拡大 E/F のガロア群と呼ぶ。


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{\mathbf Q}(\sqrt{2}) = \{a+b\sqrt{2} \mid a, b\in {\mathbf Q}\} のガロア群 {\rm Aut}({\mathbf Q}(\sqrt{2})/{\mathbf Q}) は、\{1, \phi\} の2個の要素からなる2次対称群 S_2 に一致する。ここで、\phi は次のように定義される。

 \phi(a+b\sqrt{2})=a-b\sqrt{2}

つまり、\phi は、方程式 X^2 - 2 = 0 の2個の解 X=\pm\sqrt{2} を相互に入れ替える写像になっている。
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自己同型部分群から生成される部分体

E の自己同型群 {\rm Aut}(E) の有限部分群 G があった場合、G で固定される部分集合 E^G = \{x \in E \mid \forall \phi\in G; \phi(x) = x\} は、E の部分体となる。

この時、G \subseteq {\rm Aut}(E/E^G) は自明であるが、実は、G={\rm Aut}(E/E^G) が成立して、さらに、[E:E^G] = |G| が成立する。以下では、これを順に示していく。


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(1) 先の例で、拡大 {\mathbf Q}(\sqrt{2}) = \{a+b\sqrt{2} \mid a, b\in {\mathbf Q}\} \supset {\mathbf Q} のガロア群 {\rm Aut}({\mathbf Q}(\sqrt{2})/{\mathbf Q}) を天下り的に与えたが、上記の事実を用いると、次のように正当化できる。

まず、先に定義した2次対称群 S_2 = \{1, \phi\} は、{\rm Aut}({\mathbf Q}(\sqrt{2})) の有限部分群であることは自明。また、これで固定される部分集合は、{\mathbf Q}(\sqrt{2})^{S_2} = {\mathbf Q} である。したがって、拡大 {\mathbf Q}(\sqrt{2})/{\mathbf Q} のガロア群 {\rm Aut}({\mathbf Q}(\sqrt{2})/{\mathbf Q}) は、S_2 に一致する。

(2) 体の拡大 {\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3})/{\mathbf Q} は、拡大の次数が4であった。上記の事実が正しければ、{\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3}) の自己同型部分群で、{\mathbf Q} を動かさないもの G が存在したとすると、必ず、|G|=4 を満たすことになる。このような G を実際に構成してみる。

まず、{\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3}) は、X^2-2=0 の解 X=\pm \sqrt{2}X^2-3=0 の解 X=\pm \sqrt{3} のそれぞれ一方を {\mathbf Q} に付与して得られた体である。そこで、それぞれの解を入れ替える操作を考えてみる。組み合わせとしては、次の4つの操作が得られる。

1\sqrt{2} \rightarrow \sqrt{2}, \sqrt{3} \rightarrow \sqrt{3}(どちらも入れ替えない。)
\phi_1\sqrt{2} \rightarrow -\sqrt{2}, \sqrt{3} \rightarrow \sqrt{3}\sqrt{2}だけ入れ替える。)
\phi_2\sqrt{2} \rightarrow \sqrt{2}, \sqrt{3} \rightarrow -\sqrt{3}\sqrt{3}だけ入れ替える。)
\phi_3\sqrt{2} \rightarrow -\sqrt{2}, \sqrt{3} \rightarrow -\sqrt{3}(両方入れ替える。)

この4つの操作は、全体として、クラインの4元群と同型になっており、{\rm Aut}({\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3})) の部分群となる。

これらが自己同型写像であることは、次の計算で確認できる。まず、各写像は一般の元に対して、次のように作用する。

\phi_1(a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6})=a-b\sqrt{2}+c\sqrt{3}-d\sqrt{6}
\phi_2(a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6})=a+b\sqrt{2}-c\sqrt{3}-d\sqrt{6}
\phi_3(a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6})=a-b\sqrt{2}-c\sqrt{3}+d\sqrt{6}

一方、

 (a_1+b_1\sqrt{2}+c_1\sqrt{3}+d_1\sqrt{6})(a_2+b_2\sqrt{2}+c_2\sqrt{3}+d_2\sqrt{6})
=(a_1a_2+2b_1b_2+3c_1c_2+6d_1d_2)
 +(a_1b_2+b_1a_2+3c_1d_2+3d_1c_2)\sqrt{2}
 +(a_1c_2+c_1a_2+2b_1d_2+2d_1b_2)\sqrt{3}
 +(a_1d_2+b_1c_2+c_1b_2+d_1a_2)\sqrt{6}

この両辺を見比べると、先の各写像は積について同型写像になっていることがわかる。

以上より、G=\{1,\phi_1,\phi_2,\phi_3\} として、{\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3})^G = {\mathbf Q} であり、[{\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3}):\mathbf{Q}] = |G| が成立していることが確認できる。
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定理2.1 (Dedekind)
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相違なる自己同型写像 \{\phi_1,\cdots,\phi_n\} \subset {\rm Aut}(E) が与えられた時、\{a_1,\cdots,a_n\} \subset E について、

\forall x \in E;\, \sum_{i=1}^n a_i\phi_i(x) = 0 が成り立つならば、a_i=0i=1,2,\cdots,n)である。

(証明)
n についての帰納法で示す。n=1 の時は、a_1\phi_1(x)=0x=1 を代入すると、\phi_1(1)=1 より a_1=0 となる。

n-1 まで成立すると仮定して、n>1 の場合を考えると、\phi_n \ne \phi_1 より、\phi_n(x_0)\ne\phi_1(x_0) となる x_0\in E が取れる。

この時、\sum_{i=1}^n a_i\phi_i(x) = 0 の両辺に \phi_n(x_0) を掛けると、

 \sum_{i=1}^n a_i\phi_i(x)\phi_n(x_0) = 0 ――― (1)

あるいは、(x は任意なので)xxx_0 に置き換えた場合を考えると、

 \sum_{i=1}^n a_i\phi_i(xx_0) = \sum_{i=1}^n a_i\phi_i(x)\phi_i(x_0) = 0 ――― (2)

(1)(2)の辺々を引いて、(i=n の項が相殺することに注意して)

  \sum_{i=1}^{n-1} a_i\phi_i(x)\{\phi_n(x_0)-\phi_i(x_0)\} = 0

したがって、帰納法の仮定より、a_i\{\phi_n(x_0)-\phi_i(x_0)\} = 0i=1,\cdots,n-1)が得られる。

特に、i=1 の場合を考えると、\phi_n(x_0)-\phi_1(x_0)\ne 0 より、a_1=0 が得られる。

よって、最初の条件は、\forall x \in E;\, \sum_{i=2}^n a_i\phi_i(x) = 0 となり、帰納法の仮定より、a_i=0i=2,\cdots,n)となる。
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定理2.2
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体の拡大 E/F において、F を固定する E の自己同型写像は、高々 [E:F] 個である。つまり、

 |{\rm Aut}(E/F)| \le [E:F]

(証明)
[E:F]=m として、\{\alpha_1,\cdots,\alpha_m\} \subset EF 上のベクトル空間 E の基底とする。いま、F を固定する E の自己同型写像で、相違なるものが n 個あるとして、それらを \{\phi_1,\cdots,\phi_n\} とする。

ここで、数ベクトル空間 E^mn 個の元を次で定義する。

 {\mathbf v}_i = \left(\phi_i(\alpha_1),\cdots,\phi_i(\alpha_m)\right)i=1,\cdots,n

この時、これらの数ベクトルは互いに一次独立であることが示せる。実際、\sum_{i=1}^n \beta_i{\mathbf v}_i = 0 とすると、ベクトルの各成分を書き下して、

 \sum_{i=1}^n \beta_i\phi_i(\alpha_j) = 0j=1,\cdots,m

したがって、任意の x=\sum_{j=1}^m a_j\alpha_j\in Ea_j\in F)に対して、

 \sum_{i=1}^n \beta_i\phi_i(x) = \sum_{i=1}^n \beta_i\phi_i(\sum_{j=1}^m a_j\alpha_j) = \sum_{j=1}^m a_j \sum_{i=1}^n \beta_i\phi_i(\alpha_j) = 0

となり、定理2.1より、\beta_i=0i=0,\cdots,n)が得られる。m 次元数ベクトル空間で一次独立な元は高々 m なので、n\le m が言える。
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定理2.3
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E の有限な自己同型部分群 G \subset {\rm Aut}(E) が存在した場合、{\rm Aut}(E/E^G) = G かつ [E:E^G] = |G| が成立する。

(証明)
G \subseteq {\rm Aut}(E/E^G) は自明で、これより、 |G| \le |{\rm Aut}(E/E^G)| \le [E:E^G] が成立する。最後の不等式は、定理2.2による。

したがって、逆向きの不等式 |G| \ge [E:E^G] が示せれば、|G| = |{\rm Aut}(E/E^G)| = [E:E^G] となり、元の個数が等しいことから、G={\rm Aut}(E/E^G) も言える。

以下、|G|=m として、[E:E^G] \le m を示す。それには、E^G 上のベクトル空間 E から n > m 個の元 \{\alpha_1,\cdots,\alpha_n\} を任意に取った時、これが一次従属なベクトルであることが言えればよい。いま、

 G = \{\phi_1,\cdots,\phi_m\}\phi_1 = 1

として、数ベクトル空間 E^mn 個の元を次で定義する。

 {\mathbf v}_i = \left(\phi_1(\alpha_i),\cdots,\phi_m(\alpha_i)\right)i=1,\cdots,n

これらのベクトルで一次独立なものは高々 m 個(m \lt n)であることに注意して、実際に一次独立なものが r 個あるとした場合、順番を並べ替えて、それらを \{{\mathbf v}_1,\cdots,{\mathbf v}_r\} とする。この時、{\mathbf v}_n は、最初の r 個に対して一次従属となり、

 {\mathbf v}_n = \sum_{k=1}^r\beta_k{\mathbf v_k}\beta_k\in E)――― (1)

と書ける。これに {\mathbf v}_i の定義を代入して成分ごとに表示すると、

 \phi_j(\alpha_n) = \sum_{k=1}^r\beta_k\phi_j(\alpha_k)j=1,\cdots,m)――― (2)

この両辺に任意の \phi \in G を作用させると、\phi\circ\phi_j = \phi_{j'} として、

 \phi_{j'}(\alpha_n) = \sum_{k=1}^r\phi(\beta_k)\phi_{j'}(\alpha_k)j'=1,\cdots,m

これは、ベクトル {\mathbf v}_i での表記に戻すと、

 {\mathbf v}_n = \sum_{k=1}^r\phi(\beta_k){\mathbf v_k} ――― (3)

(1)(3)を比較すると、 \{{\mathbf v}_1,\cdots,{\mathbf v}_r\} は一次独立であることから、\phi(\beta_k)=\beta_kk=1,\cdots,r)が得られる。これは、\beta_kG で固定される事を意味しており、\{\beta_1,\cdots,\beta_r\} \subset E^G が言える。

さらに、(2)で j=1 の場合を取り出すと、\phi_1 = 1 より、

 \alpha_n = \sum_{k=1}^r \beta_k\alpha_k\beta_k \in E^G

が得られる。これは、\alpha_n は、\{\alpha_1,\cdots,\alpha_r\} に対して、E^G 上のベクトル空間で一次従属であることを示す。
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ガロア拡大の基本条件

一般に、体 E に対して、自己同型群 {\rm Aut}(E) の有限次元部分群 G を用いて誘導される拡大 E/E^G をガロア拡大と呼ぶ。この時、定理2.3は、次のように言い換えることができる。

「ガロア拡大 E/E^G を誘導する部分群 G はガロア群 {\rm Aut}(E/E^G) に一致する。また、拡大の次数はガロア群の位数に一致する。」


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(1) {\mathbf Q}(\sqrt{2})/{\mathbf Q}、あるいは、{\mathbf Q}(\sqrt{2},\sqrt{3})/{\mathbf Q} は、E^G = \mathbf{Q} となるような有限次元部分群 G が存在した(それぞれ、S_2、および、クラインの4元群)ので、ガロア拡大になっている。このような部分群が構成できたのは、方程式 X^2-2=0、あるいは、X^2-3=0 の解がすべて拡大体に含まれているからという点に注目しておく。

(2) 体の拡大 {\mathbf Q}(\sqrt[3]{2})/{\mathbf Q} は、{\mathbf Q}(\sqrt[3]{2})^G = \mathbf{Q} となるような有限次元部分群 G \subset {\rm Aut}({\mathbf Q}(\sqrt[3]{2})) を持たない。つまり、これは、ガロア拡大ではない。これは、方程式 X^3-2=0 のすべての解が拡大体に含まれていない事に起因する。

※一般に体 F の多項式 f(X)=X^n-a について、拡大 E/F で、f(X) = (X-\alpha_1)\cdots(X-\alpha_n)\alpha_i\in E)と分解する最小のものを「べき根拡大」と呼ぶ。上記の関係は、べき根拡大とガロア拡大の間に関連性があることを示唆している。
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定理2.4
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体の拡大 E/F がガロア拡大であることは、E^{{\rm Aut}(E/F)}=F が成り立つことと同値である。

※一般には、E^{{\rm Aut}(E/F)}\supseteq F である事に注意。

(証明)
E^{{\rm Aut}(E/F)}=F と仮定すると、G={\rm Aut}(E/F) として、E^G = F となるので、E/F は、G を用いて誘導される拡大 E/E^G に一致する。

逆に、ある G \subset {\rm Aut}(E) を用いて、F=E^G となる場合、定理2.3より、G={\rm Aut}(E/E^G) なので、F=E^{{\rm Aut}(E/F)} が成立する。
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